歩けない
父が歩けなくなった。
93才、無理もない。
ベッドに腰掛けて、介護レンタルしたテーブルで朝食を済ませたあとで、
むくんで言うことを聞かなくなった足をさすりながら、ウンウン唸りながら、なんとか動かないか試している。
そして、独りごちている。
・・やっぱり無理かなぁ・・・。
切ない。
つい半年前まで、自転車に乗り、畑を耕し、日焼けしながら毎日外出していたのに。
ある日、足が腫れて動かなくなる。
入院5ヶ月が終わって施設に移ってからは、リハビリがなくなって更に足の筋肉は落ち、そして歩けなくなった。
本人が一番辛いだろう。
でも、まわりもそれなりに辛い。
インドアで楽しみのない父は、本も新聞もテレビもそのほかの何もかも、いらないと言う。食事とトイレ以外は寝ている。
ボケるんじゃないかと思ったが、これがボケない。
頭はしっかりしている。
なのに、ただ寝ている。
歩けなくなったことがないので、
気持ちがわからない。
これからどんな風に楽しみを見つけてあげられるのか。
それが、わからない。